昨今の働き方改革もあり、プライベートを充実させたいと考える大人の方も多いのではないでしょうか。実はフォーレ音楽院でも、趣味として音楽を始めたいという大人の生徒さんが増えてきています。
そこで今回は、大人になってからピアノを始めたというYさんにインタビューさせていただきました。
「大人の趣味のピアノでも受け入れてくれるんだろうか」と心配だったというYさん。受講してみてのお話を伺いました。
――大人になってからピアノを始められたとお聞きしましたが、ピアノを始めるまではどんな風に過ごされてたんですか?
幼稚園の頃からピアノの音が好きで、習いたいと思っていたのですが経済的な理由で習えなくて。オルガンを買ってもらえたのでオルガン教室に通っていました。オルガン教室って、みんな一通り上達するとピアノに移行していくんですが、私の家はそれができなかったんですよね。小学校の時は、音楽の授業で聴いたモーツァルトのピアノソナタのレコードを買って、ずっと聴いてました。いつかピアノを習いたいという思いは子どもの頃からずっとありましたね。
働くようになってから、すぐに自分でアップライトピアノを買って習い始めたんですが、3年続けた頃、仕事が忙しくなったのと、ショパンのノクターンを弾けるようになったのもあって、一度ピアノから離れて他の趣味(山登り)に傾倒していきました。
――そこからまたピアノを再開し、フォーレ音楽院にたどり着いたきっかけはどんなことだったんですか?
12年前に事情があって山登りを辞めた時に、「もう一度ピアノをしたい」と思ったんです。再開してすぐに習った先生がピアノ講師を辞められてしまい、次に習った先生が私には合わなくて。困っていた時にお友達から「本当に上手になりたかったら、フォーレ音楽院の恵先生がいいよ」と勧められたんです。フォーレのことは以前から知っていたんですが、ハードルが高いなと思っていたんですよね。迷っていたらそのお友達が「私から頼んでみようか?」と声をかけてくれて、だったら自分で電話しよう!と思い切って問い合わせました。
――何度か教室を変えられたとのことですが、他の先生と恵先生の違いってどんなところだと思われますか?
恵先生はレッスンでいつも隣で弾いて下さって、先生のいい音、いい響きを聴けるのがとてもいいですね。「ああ、こういう音で、こんな風に弾くんだ」というのが分かるので。いつも先生の音に惚れ惚れしています(笑)。
それに恵先生は、私のようにプロを目指すわけではない生徒でも、手抜きせずにきちんと教えてくださるんですよね。たぶん恵先生もピアノが大好きなんだと思います。ピアノが好きだから、大人の趣味であっても、手を抜くような事はされないんじゃないでしょうか。
恵先生に習うようになってから、”ピアノの弾き方”が分かるようになってきたように感じます。私にできるかどうかは別ですけど…(笑)。恵先生が熱心に教えてくださるので、私も応えたい、上手になりたいと思っています。
――少し話題がそれますが、Yさんはお菓子作りもお上手ですし、山登りやピアノもされてきて、趣味がたくさんある素敵な大人だなと思っているんですが、一方で、趣味がなくて時間を持て余してしまう大人も多いと思うんですよね。Yさんは、意識的に趣味を作ろうと思われてきたんでしょうか?
いえ、自然と、ですよ。ピアノも昔から好きでしたし、お菓子作りも、お菓子がただただ好きで。私が小さい頃は市販のお菓子は今ほどおいしくなかったんですよ!おいしいのが食べたかったら自分で作るしかないと思って、小学校高学年の時に天火(オーブン)を買ってもらって、それからずっとお菓子も作ってますね。
山登りはお菓子やピアノとは少し違って、達成感が嬉しくて続けていました。だんだん高い山、だんだん難しいコース、と挑戦するのが楽しいですし、山の雰囲気、木の香りも好きでした。
――ピアノはどうですか? 達成感ありますか?(笑)
ありますよ~!最近やっとバッハのインベンションにたどり着いたんです。ピアノの素敵な曲って何万曲とあるから、最初の頃はあれもこれも弾きたいと思っていたけど、今は小さな曲、易しい曲でも、それを綺麗に弾けたら嬉しいし、忘れてしまってもまた次の曲を一生懸命弾く、それが達成感につながっています。
――先ほど、ショパンのノクターンを弾かれていたとお聞きしましたが、恵先生のもとで基礎的なことから指導を受けるとなると、これまでより易しい曲を習うこともありますよね。正直なところ、後戻りしたような感覚はありませんでしたか?
それはなかったですね。やっぱり自己流ではダメだなと思いました。ただ楽譜通りに音を拾って弾くだけではなくて、音楽の規則、曲の構造、抑揚の付け方など、いろんなことを恵先生から教わっています。そういうことを他のピアノ教室ではなかなか教えて下さらないんですよね。曲のことを分かってから弾くと、頭が整理されてより演奏しやすくなる気がします。
楽譜の見方、練習の仕方も変わりました。例えば「ここは上の音がずっとドだから下に意識を向ける」というような、効率的な練習方法を教えてくださるんです。今は何回も同じことを先生に言わせてしまっていて申し訳ないんですが…いつかそれを自分で発見できるようになりたいです!
――練習の話が出ましたが…お忙しい日々の中で、練習が辛いときはありますか?
ありますあります(笑)。今は仕事をしているので、夜ごはんを食べて、片づけてからだと、夜10時とかになっちゃって。気づいたらピアノの前で寝てることもあります(笑)。 十分に練習できなかったら次のレッスンに行きづらくなりますよね。そういう時は、先生に申し訳なくても、休みます、辞めます、にならないよう、「レッスンの時に練習させてもらおう」と思うようにしています。それは恵先生も理解してくださっていると思います。
――先生との普段の会話の中で自分のライフスタイルを共有して、一緒に無理なく続けるというのが大事な気がしますね。
そうですね。大人になってからピアノを習おうと思う方は、やっぱりピアノが好きだっていう方が多いと思うんですよね。
この間、とあるピアノ友達が「20年前には鍵盤の位置も分からなかった自分が、ここまで弾けるようになった。30年後が楽しみだ」と言っていたのにすごく感動して。私もまだまだ頑張らないと!と思いました。
だから恵先生ずーっと元気で教えてください!私、ヨボヨボになってもここに通います(笑)。
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Yさんの講師…斎藤恵(ピアノ・ソルフェージュ)
パリ音楽院ピアノ科、室内楽科卒業。ピアノを岩本義哉、山田富士子、M.ウークラン、G.タッキーノの各氏に師事。